Studio One ボーカルプリセット

I. Studio Oneボーカルプリセットの紹介

Studio Oneでボーカルを録音またはミックスする場合、よく作られたプリセットは、毎回同じチェーンを再構築することなく、モダンで再現可能なボーカルトーンを提供します。プリセットはバランスの取れたパスをロードします—トーンシェイピングのためのEQ、レベルコントロールのためのコンプレッション、滑らかな子音のためのディエッシング、そしてセンスの良いアンビエンス—これによりアイデアを素早くキャプチャし、デモからリリースまでサウンドの一貫性を保てます。BCHILL MIXでは、Studio Oneのチェーンはイヤホン、電話、カーオーディオ、スタジオモニターでの再生に適した音作りをしつつ、快適なトラッキングのために軽やかさも保っています。

このガイドでは、Studio Oneボーカルプリセットとは何か、いつ役立つか、Studio One 6/7でのインストールと調整方法、ラップ、R&B、ポップ、シンガーソングライター/クリアボイス、ロック/オルタナティブ、チューニング重視スタイルの実用的なレシピを説明します。また、最小限の録音テンプレートがセッションセットアップを高速化し、大規模プロジェクトを整理する方法も紹介します。録音準備が整ったレイアウトについてはStudio One Recording Template (Stock Plugins)をご覧ください。クロスDAWオプションについては、より広範なVocal Presetsカタログを参照してください。

II. Studio Oneのボーカルプリセットとは？

Studio Oneでは、ボーカルプリセットは、既知の順序でプロセッサーが配置され、適切な初期設定がされた保存済みのチャンネル/トラックプリセットまたはFXチェーンです。クリーンでモダンなチェーンには通常、以下が含まれます:

• チャンネルEQは、穏やかなハイパスと小さな外科的調整で、低周波のノイズを除去したり、耳障りな音を抑えます。
• 2つの軽いコンプレッサーを直列に（遅めの「レベリング」段階と速めの「ピークキャッチ」段階）配置し、ポンピングなしでダイナミクスを安定させます。
• ディエッサーはエア感や明るさの前に配置し、「s」や「t」が滑らかに聞こえるようにします。
• オプションのサチュレーション/エキサイターで存在感とエッジを加えます（トラッキング時は控えめに使用してください）。
• センドによる時間ベースのFX（ショートプレート/ルームとテンポに合わせたディレイ）で、空間が歌詞をサポートしつつもかき消さないようにします。

リードトラックにチェーンをロードし、しきい値を少し変えてダブル/ハーモニー用に複製するか、トラックに補正処理を置き、ボーカルバスにクリエイティブな仕上げを施します。プリセットは出発点です—それを通して録音し、しきい値、EQ量、送信レベルをあなたの声、マイク、曲に合わせて調整してください。スイートスポットを見つけたら、それを自分のFXチェーンまたはトラックプリセットとして保存し、将来のプロジェクトで録音準備ができた状態で開けるようにしましょう。

III. なぜプリセットを使うのか（利点と役立つ場面）

• スピード：開いてプリセットを選び、録音開始—もう20分のプラグインウォームアップは不要です。
• 一貫性: キャリブレーションされたチェーンは、シングル、EP、ポッドキャスト、コンテンツシリーズ全体でトーンを揃えます。
• クリエイティブな焦点: パフォーマンス、ダブル/アドリブ、ハーモニー、アレンジに時間をかけ、配線作業には時間をかけないでください。
• 翻訳: チェーンは、電話やイヤホンだけでなくフルレンジモニターでも明瞭に聞こえるように調整されています。
• 低摩擦： その場での決定を減らす—ラップトップやモバイル機器での使用や、速い作曲セッションに最適です。

プリセットが最も役立つ場面： クイックデモ日、リモートコラボ、ショート/リール、週刊シングルリリース、ボイスオーバー/ポッドキャスト、そしてアイデアからテイクまで数分で進めたいあらゆるワークフロー。

IV. Studio Oneにおけるストックチェーンとプレミアムチェーン（実際に必要なもの）

ストックのみのチェーンは、Pro EQ、コンプレッサー、ディエッサー、ゲート/エクスパンダー、アナログディレイ、ルーム/プレートリバーブ、ミックスFXなどの内蔵プロセッサーを使用します。これらはポータブルでCPUに優しく、どのStudio Oneシステムでも開けるため、コラボレーションや旅行に最適です。

プレミアムチェーンは、選択したサードパーティプラグイン（すでに所有している場合）を追加し、追加のカラーやコントロールを提供します—ダイナミックEQ、キャラクターコンプレッサー、高度なサチュレーション、特殊リバーブ、専用チューニングなど。多くのアーティストは両方を保持しています：どこでも録音できるストックチェーンと、自宅で磨くためのプレミアムチェーンです。

クイックピック： プリセットが初めてですか？ クリーンな「クリアボーカル」チェーンから始めましょう。自分のスタイルがわかっているなら、スタイルに合わせたチェーン（ラップ、R&B、ポップ、ロック）を読み込み、最初から作り直すのではなく小さな調整を加えましょう。現在のプラットフォーム機能とバージョンの詳細は、PreSonusのStudio One Pro概要をご覧ください。

V. インストール＆クイックスタート（ステップバイステップ）

1. トラックを作成して名前を付けます。 リード、ダブルス、ハーモニー、アドリブ用のオーディオトラックを追加します。色分けし、グループコントロールが好みなら、シンプルなボーカルバスまたはバスチャンネルにルーティングします。
2. 入力とモニタリングを設定します。 リードトラックでインターフェースの入力を選択します。短いテストフレーズを録音し、ピークがクリッピングの安全な範囲内に収まるようにプリアンプを調整します。モニタリングに遅延を感じる場合は、録音中にI/Oバッファサイズを減らし、インサートを最小限に保ちます。ミックスダウン時にフルチェーンを再度有効にしてください。
3. プリセットチェーンを読み込みます。 Pro EQ → コンプレッサー（優しく）→ ディエッサー → コンプレッサー（速く/クリーンに）→ オプションのサチュレーション → ディレイ/リバーブへのセンド。録音中はインサートを主にドライに保ち、空間にはセンドを使用してレイテンシーと発音の明瞭さを維持します。
4. Dial thresholds & sends. 最も大きなラインで数dBのゲインリダクションを目指し、ポンピングを避けます。エアを加えた場合は、ディエッサーを見直して「s」が滑らかに保たれるようにします。小さくテンポに合わせたディレイと短いプレートを使い、フックではセンドをオートメーションで上げます。
5. セットアップを保存しましょう。 チェーンをユーザーFXチェーンまたはトラックプリセットとして保存し、毎回一貫したルーティング、ヘッドルーム、カラーでセッションを開始できるようにします。真のワンクリックセッションのために、自分のしきい値を設定した別バージョンも保存してください。

ゲインステージングの注意点： トラックメーターでピークが約−10〜−6 dBFSの健康的なヘッドルームを持つトラックを使用してください。インターフェースの赤ランプは避けてください。クリッピングは後で修正できません。メイクアップゲインでレベルが高くなりすぎる場合は、次のプロセッサーを強くかけるのではなく、クリップやエフェクトの出力をトリムしてください。ラフミックスのピークを適切に保ち、録音中にラウドネスを追いかけないようにしましょう。

チューニングのヒント： 優しい補正には、チェーンの早い段階（ディエッサーの前）にチューニングを配置します。外科的な編集には、テイクをコンプし、録音後に詳細なチューニングを適用します。後でボーカルを明るくする場合は、シビランスを再確認してください。

VI. スタイルレシピ＆ファストフィックス（ラップ、R&B、ポップ、ロック/オルタナ、シンガーソングライター/クリアボイス、チューニングフォワード）

ラップリード（モダンパンチ） — 2つの軽いコンプレッサーを直列にしてダイナミクスをタイトに保ちつつトランジェントを殺しません。2〜5 kHzあたりにプレゼンスを集中させ、声を過剰にブーストするよりも楽器に小さなポケットを作ります。エネルギーを出すために短いスラップや小さなプレートを加え、ウォッシュ感を抑えます。コーラスはインサートのウェットレベルを上げるのではなく、ディレイセンドをオートメーションで持ち上げます。

メロディックラップ / トラップ — 明るく滑らかなトップ。ディエッス前に少しサチュレーションを加えてパンチを出し、続けてディエッスで子音がスピッティにならないようにします。アドリブには少し高めのハイパスと少し多めのディエッスをかけてスタックを整えます。フックは少し多めのディレイフィードバックとプレディレイをプレートにかけて広げます。

R&B / Soul — 穏やかなアタック／リリース、柔らかいエアシェルフ、広がりのあるアンビエンス。ブーストでヒスが増える場合は、明るさを抑えるか、よりソフトな2段目のディエッサーを追加してください。バックグラウンドはハイパスをかけ、リードの後ろに位置する遅めのステレオディレイを使い、歌詞が前に出るようにします。豊かな重ね録りには、長めのプリディレイと低めのセンドレベルを試して、リバーブの尾が言葉を隠さないようにしましょう。

ポップ — 丁寧なディエッシングで磨かれた高音、リズム空間のためのテンポ同期ディレイ、そして“グルー”のための非常に短いルーム。ラウドネスを合わせて判断し、“大きい”がA/Bチェックに偏らないようにしましょう。密なアレンジでは、言葉の明瞭さを保つためにギターやシンセの2～4 kHzをカットしましょう。

ロック／オルタナティブ — ボーカルを前に出しつつきつくならないように：適度なコンプレッションにわずかなサチュレーションを加え、ディエッサーをかけます。エネルギーのために短いルーム／プレートと80～120 msのモノスラップを使いましょう。シンバルがボーカルの明るさと競合する場合は、ボーカルを過度にディエッシングするよりドラムバスのハイシェルフを少しカットしましょう。

シンガーソングライター / クリアボイス — 明瞭さとノイズコントロールを優先：透明なコンプレッション、適度なディエッス、乾いた感じが不自然なら短いアンビエンスを少し。テクニックが重要—一定のマイク距離、ポップフィルター、静かな部屋でビートの重い処理よりも常に優先。息やノイズが問題なら、ハードゲートではなく息の周りでクリップゲインをオートメーションします。

チューニング重視（フック＆超クリーンなポップ） — まず曲のキー／スケールを設定します。自然な感触には控えめなリチューン量を使い、ロボット調のトーンには意図的に強めにかけます。明るくした後、ディエッサーを再確認し、シビランスが滑らかに保たれるようにしきい値を調整しましょう。

よくある修正：

• きつい「s/t」音：エアシェルフを少し下げるか、ディエッサーのしきい値を緩めて、シビラントにのみ作用させます。
• こもったロー・ミッド：150〜350 Hzあたりを小さく狭くカットし、リードよりもダブルやハーモニーはハイパスを高めに設定します。
• ビートにボーカルが埋もれている：競合する楽器の2〜5 kHzあたりに小さなポケットを作るか、コーラスでボーカルバスを約1 dB上げます。
• 空間が多すぎる：センドを低く始め、リバーブやディレイを全体的に高く保つのではなく、フック部分でオートメーションをかけます。
• トラッキング中のレイテンシ：バッファを下げ、軽量チェーンでトラッキングし、後でエンハンサーを追加します。

VII. 録音テンプレートとプリセットの比較（スケールするワークフロー）

ボーカルプリセットはトラックやバスのトーンとダイナミクスを形成します。録音テンプレートはセッション全体のレイアウト（リード、ダブル、ハーモニー、アドリブなどの事前命名トラック、色分け、バスルーティング、キューミックスの基本、準備されたセンド）を提供し、アイデアからテイクまで数秒で移行し、大規模なセッションを整理できます。ほとんどのクリエイターは両方を保持します：

• テンプレートを開くことで、曲ごとにヘッドルーム、メーター、ルーティングが一貫していることを保証します。
• スタイル（ラップ、R&B、ポップ、ロック）に合ったプリセットチェーンを読み込み、調整したバージョンを「声」の出発点として保存しましょう。
• クリエイティブな仕上げ（エキサイター、軽いグルーブコンプ、ステレオ幅）にはVocal Busを使用し、補正は個別トラックで行います。

初日から整理された出発点が欲しい場合は、Studio One Recording Template (Stock Plugins)を使用してください。リグ間でサウンドを反映するクロスDAWチェーンには、メインのVocal Presetsコレクションを参照してください。Pro Toolsでも制作する場合は、Pro Tools templatesとレイアウトを比較して、ワークフローを一貫させることができます。

最終更新日: 2025年8月 · 著者: Byron Hill (BCHILL MIX)